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高齢者の筋力低下と食事|落ちた筋肉は食事だけで戻せる?理学療法士が解説

高齢者の筋力低下と食事|落ちた筋肉は食事だけで戻せる?理学療法士が解説 体の情報

「最近、以前より立ち上がりにくくなった」
「高齢の親の足腰が細くなってきた気がする」
「食事を変えれば、落ちた筋肉は戻るのだろうか」

このように感じて、食事を見直そうとしている方もいると思います。

結論からいうと、食事は筋肉を保つうえで大切ですが、食事だけで落ちた筋肉や筋力が元の状態へ戻るとは限りません。

筋肉や筋力には、加齢だけでなく、普段どれくらい身体を動かしているか、病気や体調、そして食事量や栄養状態など、さまざまな要因が関係します。

そのため筋力低下が気になるときは、まず最近、食べる量が減っていないか、体重が減っていないか、身体を動かす機会が減っていないかなど、食事全体と生活の変化を振り返ることが大切です。

そのうえで、食事内容を見直すポイントの一つとして、たんぱく質を含む食品をどのくらい取れているかを確認していきます。

この記事では、高齢者の筋力低下が気になるときに、毎日の食事でどこを見直せばよいかを順番に紹介します。

  • 筋力低下が気になるときは、食事だけでなく生活全体の変化も振り返ります
  • まず食事量と体重変化を確認し、そのうえで食事内容を見直します
  • たんぱく質は食事を見直すポイントの一つで、身体活動も合わせて考えます
  • 食欲低下・むせ・食事準備の負担など、困っている理由によって次の対応は異なります
  1. 高齢者の筋力低下は食事だけで戻せる?
    1. 筋力・筋肉量は食事だけで決まらない
    2. 「筋力が落ちた=サルコペニア」とは限らない
  2. まず「何を食べるか」より食事量と体重変化を確認する
    1. 食事量が減るとエネルギーやたんぱく質も不足しやすい
    2. 意図せず体重が減っていないか確認する
  3. 高齢者はたんぱく質をどのくらい取ればいい?
    1. 65歳以上の食事摂取基準を目安として知る
    2. 1日の食事の中でたんぱく質源を取り入れられているか確認する
    3. 治療中の病気や食事指示がある場合は自己判断で増やさない
  4. 毎日の食事でたんぱく質を取り入れる方法
    1. 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品から選ぶ
    2. 朝・昼・夕のどこで取り入れられるか考える
    3. 食事量が少ないときは、たんぱく質だけを増やそうとしない
  5. 「落ちた筋肉」が気になるなら食事だけでなく身体活動も考える
    1. 身体を動かすことも合わせて考える
    2. 運動や体力維持を詳しく知りたい場合
  6. 食事を続けにくいときは「何が困っているか」で次の方法を分ける
    1. 食欲低下・体重減少・むせがある場合は、商品選びより状態の確認を優先する
    2. 普段の食事だけで必要な栄養を取りにくい場合は、補助食品も選択肢になることがある
    3. 普通食は食べられるが食事準備が負担なら、宅配弁当も選択肢になる
  7. 筋力低下が気になるときに専門職へ相談したいケース
  8. まとめ|筋力低下が気になるときは食事量・たんぱく質・身体活動を一緒に考える
  9. 参考文献

高齢者の筋力低下は食事だけで戻せる?

筋力・筋肉量は食事だけで決まらない

「筋力が落ちてきたら、何を食べればよいのだろう」と考える方もいるでしょう。

しかし、筋力や筋肉量には、食事だけでなく身体活動、病気や体調なども関係します。

そのため、筋力低下が気になる場合は「何を食べるか」だけではなく、

  • 普段の食事量が減っていないか
  • 体重が減っていないか
  • 身体を動かす機会が減っていないか

も一緒に確認することが大切です。

特に高齢者では、食欲が落ちたり、口や飲み込みの問題、病気や薬の影響、生活環境の変化などによって食事量が減ることがあります。

まずは現在の食生活と生活全体を振り返るところから始めましょう。

「筋力が落ちた=サルコペニア」とは限らない

高齢者の筋肉について調べると、「サルコペニア」という言葉を目にすることがあります。

サルコペニアは、単に「最近足腰が弱った気がする」という自覚だけで決まるものではありません。

筋肉量や筋力などを確認して判断するため、

「階段がつらくなった」
「歩くのが遅くなった」
「足が細くなった気がする」

といった変化だけで、自分でサルコペニアと判断する必要はありません。

ここからは、筋力低下が気になるときに、毎日の食事で何を確認すればよいかを見ていきます。

まず「何を食べるか」より食事量と体重変化を確認する

食事量が減るとエネルギーやたんぱく質も不足しやすい

筋力低下が気になると、「たんぱく質が足りないのでは」と考えがちです。

しかし、その前に確認したいのが食事全体の量です。

必要な食事量は、年齢、性別、体格、身体活動量、病気などによって異なります。そのため、この記事で「1日○kcal食べればよい」と一律に決めることはできません。

まずは、以前の自分と比べて食べる量が減っていないかを確認してみましょう。

たとえば、

  • 食事を抜くことが増えた
  • 1回に食べる量が以前より少なくなった
  • 主食やおかずを残すことが増えた
  • 朝食や昼食を簡単なものだけで済ませることが増えた
  • 食欲がなく、好きなものしか食べられなくなってきた

といった変化がないか振り返ります。

食事全体の量が減れば、たんぱく質だけでなく、身体を動かすために必要なエネルギーも十分に取れなくなる可能性があります。

「筋肉のために何を追加するか」を考える前に、そもそも食べる量そのものが以前より減っていないかを確認することが大切です。

意図せず体重が減っていないか確認する

食事量の変化は、自分では気づきにくいこともあります。

そこで、もう一つ確認したいのが体重の変化です。

特に減量していないにもかかわらず、

「以前より体重が減ってきた」
「服がゆるくなってきた」
「家族から痩せたと言われるようになった」

といった変化があれば、食事量や体調を振り返るきっかけになります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、個人のエネルギーの過不足をみる際には、推定される必要量だけではなく、体重の変化を確認することが重要とされています。

食事量の低下や意図しない体重減少が続いている場合は、たんぱく質を増やすことだけで解決しようとせず、なぜ食べられなくなっているのかも考えていきましょう。

高齢者はたんぱく質をどのくらい取ればいい?

65歳以上の食事摂取基準を目安として知る

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、65歳以上のたんぱく質について、次の基準が示されています。

項目65歳以上
男性の推奨量60g/日
女性の推奨量50g/日
目標量総エネルギーの15~20%

65~74歳と75歳以上で、上記の値は同じです。

これらは健康な人の食生活を考えるための一般的な参考値であり、筋力の改善を保証する量ではありません。

また、必要な量は食事全体や健康状態によっても変わります。

細かな数字だけにこだわるより、「普段の食事でたんぱく質を含む食品を取れているか」を振り返るところから始めると分かりやすいでしょう。

1日の食事の中でたんぱく質源を取り入れられているか確認する

「毎食○g取らなければならない」と考える必要はありません。

まず1日の食事を振り返って、

肉・魚・卵・大豆製品・乳製品など、たんぱく質を含む食品をどこで取り入れているか

を確認してみましょう。

たとえば、

朝食がパンと飲み物だけなら、卵やヨーグルトを加えられそうか。

昼食が麺類だけなら、卵、豆腐、肉や魚などを一緒に取れるか。

夕食ではすでに肉や魚を食べているなら、無理に増やす必要はないかもしれません。

「朝・昼・夕のどこなら取り入れやすいか」と考えると、普段の生活へ落とし込みやすくなります。

治療中の病気や食事指示がある場合は自己判断で増やさない

たんぱく質が大切だからといって、誰でも自己判断で増やせばよいわけではありません。

腎臓病などの治療で、医師や管理栄養士からたんぱく質や食事量について指示を受けている場合は、その指示に従ってください。

そのような場合は、筋力低下が気になっても自己判断でたんぱく質やプロテインを増やさず、治療を担当している医療者へ確認しましょう。

毎日の食事でたんぱく質を取り入れる方法

肉・魚・卵・大豆製品・乳製品から選ぶ

たんぱく質は、特別な食品だけから取るものではありません。

肉や魚、卵、大豆製品、乳製品など、普段の食事で使うさまざまな食品に含まれています。

「60gと言われても、実際の食事ではどのくらいなのか分からない」という方もいると思います。

代表的な食品では、おおよそ次のくらいのたんぱく質を取ることができます。

食品食品量の目安たんぱく質の目安
鶏むね肉(皮なし)80g約19g
鮭80g約18g
卵1個(可食部約50g)約6g
納豆1パック程度(40g)約7g
木綿豆腐150g約11g
牛乳200mL約7g

※食品の種類、商品、調理方法、実際に食べる量によって、たんぱく質量は変わります。上表は日常の食事を考えるためのおおよその目安です。

この表を見ると、たんぱく質はプロテインなどの補助食品だけでなく、普段の食品からも取ることができます。

どれか一つの食品だけで必要量を満たそうとするのではなく、普段の食事の中で取り入れやすい食品を組み合わせて考えましょう。

朝・昼・夕のどこで取り入れられるか考える

上の表を見ると、食品によって1回に取れるたんぱく質量には違いがあります。

ただし、「1食で○g必ず取る」と考える必要はありません。

まず1日の食事を振り返り、

「朝食にはたんぱく質を含む食品があるか」
「昼食が麺やパンだけになっていないか」
「夕食では肉や魚、大豆製品などを取れているか」

と確認してみましょう。

朝なら何を加えやすいか
昼なら何を選びやすいか
夕食は今のままでよいか

というように、普段の食事の中で無理なく取り入れられる場所を考えてみましょう。

高齢者本人だけでなく、食事を準備する家族にとって続けやすい方法であることも大切です。

食事量が少ないときは、たんぱく質だけを増やそうとしない

食欲がなく、食事そのものをあまり取れていない場合は、たんぱく質だけに注目しないようにします。

一方で、食事量そのものが少ない場合は、普段の食品だけでは必要な栄養を取りにくいこともあります。

その場合も、すぐにプロテインだけを追加するのではなく、なぜ食事量が減っているのかを確認することが先です。

たとえば、

「肉をもっと食べよう」
「プロテインを追加しよう」

と考えても、食事全体がほとんど取れていなければ、エネルギー不足など別の問題が残る可能性があります。

食事量そのものが減っている場合は、「何を追加するか」よりも、なぜ食べる量が減っているのかを確認することを優先しましょう。

「落ちた筋肉」が気になるなら食事だけでなく身体活動も考える

身体を動かすことも合わせて考える

食事を見直すだけでなく、普段どれくらい身体を動かしているかも振り返ります。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者について、個人差に応じて可能な範囲から身体を動かすことが勧められています。

ただし、この記事では具体的な歩数や運動メニューまでは扱いません。

筋力低下が気になるときは、

食事だけでなく、普段の身体活動も合わせて考える

ことを基本にしてください。

運動や体力維持を詳しく知りたい場合

「具体的にはどのように身体を動かしたらよいのか」
「高齢者の体力維持では、運動と栄養をどう考えればよいのか」

を詳しく知りたい方は、高齢者の体力維持に必要な運動と栄養で詳しく解説しています。

食事を続けにくいときは「何が困っているか」で次の方法を分ける

同じ「食事が大変」という悩みでも、困っている理由によって次に考えることは異なります。

商品やサービスを探す前に、

状態の問題なのか、栄養を補う問題なのか、食事を準備する負担なのか

を分けて考えてみましょう。

食欲低下・体重減少・むせがある場合は、商品選びより状態の確認を優先する

食欲そのものが落ちていたり、食事量や体重が減っていたりする場合は、まず「なぜ食べられなくなっているのか」を確認します。

高齢者では、体調、薬、口腔状態、生活環境など、さまざまなことが食欲や食事量に影響します。

食欲がなく、食事量が減っている方は、高齢者の食欲不振の原因と受診の目安を先に確認してください。

また、

「食事中によくむせる」
「以前より飲み込みにくくなった」

といった変化が気になる場合は、まず高齢者のむせ・飲み込みにくさの原因と受診の目安を確認してください。

その記事で、考えられる原因や、どのような場合に受診・相談を検討するかを詳しく解説しています。

食形態の種類や考え方そのものを知りたい場合には、嚥下食・やわらか食の種類と選び方も参考になります。

普段の食事だけで必要な栄養を取りにくい場合は、補助食品も選択肢になることがある

食欲や飲み込みなどの問題を確認したうえで、普段の食事だけでは必要な栄養を取りにくい場合には、補助食品を選択肢として検討することもあります。

補助食品には、

  • たんぱく質を補うことを主な目的としたもの
  • エネルギーや複数の栄養素を補いやすいもの

など、目的の異なるものがあります。

ただし、プロテインや栄養補助食品は、高齢者なら誰にでも必要というわけではありません。

食事量、体調、治療中の病気、飲み込みの状態などによって、必要性や選び方は変わります。

普通食は食べられるが食事準備が負担なら、宅配弁当も選択肢になる

一方で、

普通食を無理なく食べることはできるものの、買い物・献立・調理・片付けが負担になっている

という場合は、問題は「食べられないこと」ではなく「食事を準備し続けること」にあります。

このような場合には、宅配弁当を利用して食事準備の負担を減らす方法もあります。

まず食事量や食事内容を確認したうえで、食事準備そのものが続けにくさの原因になっている場合の選択肢として考えます。

普通食を食べられる高齢者向けのサービスについては、高齢者向け宅配弁当の選び方・比較を見るで、冷凍・冷蔵、料金や選び方を比較しています。

筋力低下が気になるときに専門職へ相談したいケース

食事や生活を見直すことは大切ですが、変化によっては家庭での工夫だけで様子を見続けない方がよい場合もあります。

たとえば、

  • 急に立ちにくくなった、歩きにくくなったなど、身体機能が大きく変化した
  • 食欲や食事量の低下が続いている
  • 意図しない体重減少が続いている
  • むせや飲み込みにくさを繰り返し、食事量の低下や体重減少なども伴っている
  • 病気の治療で食事量やたんぱく質について指示を受けており、食事内容を変更したい

必要に応じて、医師や管理栄養士などの専門職へ相談してください。

むせや飲み込みについては、まず高齢者のむせ・飲み込みにくさの原因と受診の目安で、相談を考える目安を確認できます。

「筋肉のために何を食べるか」を考える前に、体調や食べられない原因の確認が必要な場合もあります。

まとめ|筋力低下が気になるときは食事量・たんぱく質・身体活動を一緒に考える

高齢者の筋力低下が気になるときは、特定の食品だけに注目するのではなく、次の順で整理すると分かりやすくなります。

  1. 以前より食事量が減っていないか
  2. 意図せず体重が減っていないか
  3. 1日の食事の中でたんぱく質源を取り入れられているか
  4. 普段の身体活動が減っていないか
  5. 食事を続けるうえで何が困りごとになっているか

食欲低下や体重減少があれば、まず原因を確認します。むせや飲み込みにくさが気になる場合は、症状について詳しく確認できる記事へ進みます。

普段の食事だけでは栄養を取りにくい場合には補助食品を検討する余地がありますし、普通食を食べられても食事準備が負担なら、宅配サービスが役立つこともあります。

食事、身体活動、生活上の負担を一緒に見ながら、無理なく続けられる方法を考えていきましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2025年版)
  2. 厚生労働省.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット.高齢者の低栄養予防
  4. Chen LK, Hsiao FY, Akishita M, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging. 2025;5:2164-2175.

参考情報確認日:2026年9月18日

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