PRを含みます

高齢者が転倒しやすい原因は?身体・薬・生活環境から予防のポイントを理学療法士が解説

高齢者が転倒しやすい原因は?身体・薬・生活環境から予防のポイントを理学療法士が解説 体の情報

「最近、親がよくつまずくようになった」
「筋力が落ちたから転びやすくなったのかな?」

高齢者の転倒には、歩き方や立ち上がり方の変化、薬、体調、生活環境など、さまざまな要因が関係します。

そのため、最初から「筋力が落ちたから」と原因を決めるより、まずは「どこで・何をしているときに転びそうになるのか」を確認することが大切です。

たとえば、

  • 玄関の段差で毎回つまずく
  • 夜中にトイレへ行くときだけ不安定になる
  • 立ち上がった直後にふらつく
  • 急に歩き方やふらつき方が変わった
  • 薬が変わってから眠気やふらつきが気になる
  • 一度転んでから外出を避けるようになった

では、最初にすることが違います。

この記事では理学療法士の視点から、転びそうになった場面を手掛かりに原因を整理し、家庭で何を確認し、次にどう行動すればよいのかを解説します。

まず確認したいのは「どこで・何をしているときに転びそうになるか」

家族が転倒を心配したとき、いきなり家中を改修したり、急に運動を始めたりする必要はありません。

まず思い出してほしいのは、実際に転んだ、つまずいた、ヒヤッとした場面です。

同じ「転びそうになった」でも、場面によって最初に見直すことが変わります。

こんな場面・変化がある まず確認したいこと 最初にできること
決まった段差や場所でつまずく 段差の見え方、床の物、本人の動き方 まずその場所を見直す
夜間のトイレなど暗い場所で不安定になる 明るさ、移動経路、起床直後の状態 実際の時間帯の環境を確認する
立ち上がり・歩き始め・方向転換でふらつく どの動作で起こるか、最近の動き方の変化 つかまる場所や補助具が必要か検討する
急にふらつきや歩き方が変わった いつから、どんな変化があるか 続く・繰り返す場合は医療機関へ相談する
薬の変更後に眠気やふらつきが気になる 薬を変えた時期と症状が始まった時期 自己判断で中止せず医師・薬剤師へ伝える
転倒後に外出や活動を避けるようになった 本人がどの場面を怖いと感じているか 怖い場面ごとに対策を考える

自分や家族に近い場面があれば、その項目から詳しく確認してみてください。

高齢者が転倒しやすくなる原因と、気づいたときの対応

決まった場所でつまずくなら、まずその場所から見直す

いつも同じ玄関の段差でつまずくなど、転びそうになる場所が決まっている場合は、まずその場所から直すのが分かりやすい方法です。

たとえば玄関なら、

  • 段差が見えにくくないか
  • 荷物を持ったまま上り下りしていないか
  • 靴を履いた直後にバランスを崩していないか
  • つかまっている家具が動かないか

を確認します。

廊下なら、コードや荷物、めくれた敷物などがないかを見ます。

浴室なら、濡れた床だけでなく、浴槽をまたぐときや立ち上がるときなど、実際に転びそうになる動作を確認します。

家全体を一度に直そうとするより、

「ここで何度もつまずく」「ここでヒヤッとした」という場所から優先する

方が、対策する場所を決めやすくなります。

その場所を見直した後に、寝室からトイレ、居間から玄関など、毎日よく使う移動経路へ範囲を広げていきましょう。

夜間や暗い場所で転びそうになる

昼間は問題なく歩けているのに、夜だけ転びそうになる場合は、まず夜間の移動経路を確認します。

たとえば、

  • 寝室からトイレまで暗くないか
  • 段差や床の境目が見えにくくないか
  • 通り道に荷物やコードがないか
  • ベッドから起きた直後にふらついていないか

を見てみましょう。

可能であれば、昼間ではなく実際に移動する時間帯の明るさで確認します。

昼間には目立たなかった段差や物が、夜には見えにくくなっていることがあります。

照明や通り道を整えても繰り返し転びそうになる場合や、昼間にも見えにくそうにしている場合は、見え方の変化について眼科などへ相談することも検討します。

立ち上がり・歩き始め・方向転換でふらつく

椅子から立ったとき、歩き始めたとき、向きを変えたときなどに不安定になる場合は、その動作を安全に行える環境になっているかを確認します。

たとえば、

  • 椅子から立った直後にふらつく
  • 歩き始めの数歩が不安定
  • 向きを変えるときに足が追いつかない
  • 歩く速さや歩幅が以前と変わった

といった変化です。

「椅子から立ったときにふらつく」のであれば、まず安定してつかまれる場所があるかを確認します。

動くテーブルや椅子を支えにしている場合は、かえって不安定になることがあります。

立ち上がる場所によっては、手すりを設置したり、工事をせずに置ける据え置き型手すりを使ったりする方法もあります。

歩行中の不安定さがある場合には、杖などの歩行補助具が役立つ場合もあります。

ただし、杖や手すりは「使えば安全」なのではなく、本人の身体の状態、使う場所、使い方に合っていることが重要です。

介護保険を利用している人であれば、ケアマネジャーや福祉用具貸与事業者へ、

「椅子から立つときにふらつく」
「玄関でつかまる場所が欲しい」

など、困っている動作を具体的に伝えると、据え置き型手すりなどを含めて福祉用具を検討しやすくなります。

介護保険を利用していない場合でも、まずは家族で「どの動作で、どこにつかまりたいのか」を確認すると、必要な対策を考えやすくなります。

急にふらつくようになった、歩き方が変わった

年齢とともに歩き方や身体機能が少しずつ変わることはあります。

一方で、

  • 急にふらつくようになった
  • 以前にはなかっためまいが出てきた
  • 急に歩き方が変わった
  • 短期間で転倒やつまずきが増えた

といった変化まで、「高齢だから仕方がない」と決めつけるのは避けたいところです。

これまでとは明らかに違う変化が急に現れた、繰り返している、続いている場合は、病気や体調の変化が関係していないか医療機関へ相談することを検討してください。

家族が原因を特定する必要はありません。

受診するときは、

  • いつ頃から変わったか
  • どんな場面で起きるか
  • 転倒したことがあるか
  • ほかに気になる症状があるか

を伝えられるようにしておくとよいでしょう。

薬の変更後に眠気やふらつきが気になる

薬の種類によっては、眠気やふらつきなどを通して転倒に関係する場合があります。

特に、

「薬が追加されてから眠そうにしている」
「薬が変わった頃から立ち上がるとふらつく」
「薬の変更後から転ぶようになった」

といった時期の重なりがある場合は、医師や薬剤師へ伝える材料になります。

ただし、薬の数だけを見て「減らしたほうがよい」と判断することはできません。

転倒が心配でも、本人や家族の判断で薬を中止したり、量を減らしたりしないでください。

相談するときは、

  • いつ薬が追加・変更されたか
  • いつからふらつき始めたか
  • どのような場面で起きるか

を一緒に伝えましょう。

「薬が原因だと思う」と決めつけるのではなく、「薬が変わった時期とふらつきが始まった時期が近い」と伝えるだけでも、相談の材料になります。

一度転んでから、外出や活動を避けるようになった

転倒した経験があると、「また転んだらどうしよう」と不安になり、外出や入浴、階段などを避けるようになることがあります。

このとき、いきなり「もっと歩いたほうがいい」と勧めるのではなく、まずは何が怖いのかを具体的に聞いてみましょう。

たとえば、

  • 人混みを歩くのが怖い
  • 一人で入浴するのが怖い
  • 玄関の段差が怖い
  • 立ち上がるときにまた転びそうで怖い
  • 転んだときに誰にも気づいてもらえないのが怖い

では、必要な対策が違います。

玄関の段差が怖いのであれば、段差やつかまる場所を見直す。

立ち上がりが怖いのであれば、椅子の位置や手すりなどを見直す。

介護保険を利用している人で福祉用具が必要そうであれば、ケアマネジャーや福祉用具貸与事業者へ相談する。

このように、怖い場面を具体的にすると、対策も具体的になります。

一方、転倒が心配だからといって、日常の活動をすべてやめる必要があるわけではありません。

本人の身体状態や生活に合わせて、安全に続けられる活動を考えていきます。

体力維持や身体活動、食事について詳しく知りたい場合は、こちらの記事で解説しています。

相談するときは「いつ・どこで・何をしていたか」を伝える

医療機関やケアマネジャーなどへ相談する必要が出てきたときは、

「最近よく転びます」

だけでなく、状況をもう少し具体的に伝えると役立ちます。

メモしておきたいのは、主に次の4点です。

  • いつ:いつ頃から、何時頃に起こるか
  • どこで:玄関、トイレ、浴室、屋外など
  • 何をしていたか:立ち上がった、方向転換した、段差を越えたなど
  • 前後に変化があったか:薬の変更、体調変化、転倒後の活動減少など

たとえば、

「夜中にトイレへ行くとき、ベッドから立った直後に2回ふらついた」
「この1か月、玄関の同じ段差につま先を何度か引っかけている」
「薬が変わった翌週から、昼間も眠そうでふらつくようになった」

という情報があると、状況を共有しやすくなります。

家族が原因を見つけるのではなく、起きていることを具体的に伝えられるようにすると考えてください。

転倒した後に確認したいこと|受診・相談を考える場面

意識がおかしい、大量に出血しているなど緊急性が高い場合

転倒後に、

  • 意識がない
  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • 大量の出血がある
  • 明らかに普段と様子が違い、緊急性が高いと感じる

場合は、119番への連絡を考えてください。

頭を打った、強い痛みが続く、動きにくい場合

転倒後に、

  • 頭を打った
  • 腰や背中、股関節周辺などに強い痛みがある
  • 痛みが続いている
  • 立ち上がれない
  • いつものように歩けない

といった場合は、医療機関への相談・受診を検討してください。

高齢者では、転倒後も歩けるからといって骨折を否定できない場合があります。

また、頭を打った後は、時間がたってから症状が現れる場合もあるため、その後の変化にも注意します。

救急車を呼ぶか迷ったときは#7119も選択肢

「救急車を呼ぶほどなのか分からない」
「今すぐ病院へ行くべきか迷う」

というときは、地域によって救急安心センター事業「#7119」を利用できます。

急な病気やけがについて、救急車を呼ぶ必要があるか、すぐ受診したほうがよいかなどを相談できる窓口です。

ただし、利用できる地域は異なります。

明らかに緊急性が高い場合は、#7119への相談を待たず119番へ連絡してください。

まとめ|「なぜ転ぶのか」は、実際に起きた場面から考える

高齢者の転倒は、筋力低下だけで起こるわけではありません。

歩き方や立ち上がり方の変化、薬、体調、見え方、生活環境、転倒への不安など、いくつもの要因が関係します。

まず確認したいのは、

どこで
何をしているときに
どのように転びそうになったのか

です。

決まった場所なら、まずその場所を見直す。

立ち上がりや方向転換で不安定なら、つかまる場所や補助具などを検討する。

急に歩き方が変わったなら、医療機関へ相談する。

薬の変更後なら、その時期と症状を医師・薬剤師へ伝える。

転倒後に活動を避けるようになったなら、まず本人が何を怖いと感じているかを聞く。

このように、実際に起きている場面から考えると、「次に何をするか」が見えやすくなります。

原因を1つに決めつけず、本人の変化と生活環境の両方を見ながら、今の暮らしに合った対策を考えていきましょう。

参考情報

  • 消費者庁「Vol.696 高齢者の家庭内での転倒事故に注意しましょう!」2026年9月11日
  • 国立長寿医療研究センター「転びやすくなる原因は?」
  • 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」高齢者版
  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」
  • Montero-Odasso M, et al. World guidelines for falls prevention and management for older adults: a global initiative. Age and Ageing. 2022;51(9):afac205.
  • Nicklen B, Delbaere K, Ellmers TJ. Is frailty associated with increased concerns about falling and activity restriction in community-dwelling older adults? A systematic review. J Frailty Aging. 2025;14(1):100002.
  • 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」
タイトルとURLをコピーしました